一二三さんがそのまま大人になったような顔立ちに長く黒い髪、切れ長の瞳、整っているがゆえに近寄りがたい、気高さと力強さとで仕上げられたような、高麗な美人だった。むしろ、美女だ。

おじさんと同じくらいの歳だと感じるのに、とても、見た目が若い。

「手を離すのよ!」

いつかの一二三さんと同様、まるで途中の空間を無視したかのような一瞬で、その美女は僕らに接近した。

白百合のエキスで染められたようなたおやかな指が、僕をねじ上げている一二三さんの手を、しかと掴む。

直後、僕はフローリングへ無様に落とされた。

一二三さんのお父さんが慌てて僕の肘を掴み、横へ引っ張ってくれる。

掴み合いになった一二三さん――と、おそらくそのお母さんが、綺麗な顔を怒りで染め尽くした。

「一二三、アナタはそうやってすぐに力に出るのね! そんなことで誇りだの血統だのと言えると思ってるの!? 今のアナタは、ただの化け物よ!!」

「血族の高貴な誇りを蔑ろにした母上に、一二三の存在を否定されたくはない! 化け物などと愚弄するな! このっ、恥知らずの反逆者め!!」

「なんてことを――アナタって人は……っ!!」