「あ、あの、ここ、その」

「ああ、うん、ごめんね、混乱させてしまって」

と、おじさんは苦笑した。

おそらく僕のひたいに乗っけたんだろうタオルを床から拾い上げる。

「いきなり悪いね、こんな形で知り合うことになって。本当、お詫びするよ」

「は、はあ」

お詫びすると言われても、僕はいったいなにがどうなってここにいるのか、その原因がわからないのだから、なんとも言えない、

手首のスナップを利かせてタオルをひょいひょいと折りたたんだおじさんが、じ、と僕を見る。そして笑った。

「あ、安心していいよ。自分で言っちゃうと信頼性薄いだろうけど、僕は別に怪しい者じゃないし。ここはひ、」

その時、

「悪かったと言ってる! それなのに、まだ不満があると!?」

「その態度はなに! 悪かったと思うなら、礼節をもって応えるものよ! アナタにはそれが全然見られないわ!!」

まるで竜虎が顔を突き合わせたような怒声が、リビングを抜けた、先のわからない通路の向こうから響いてきた。