さっきから何度もチャンスはあったはずなのに、驚きという名の荒波が逐一僕の意思を乱し、結局『目』をつけるための集中力を与えてくれなかった。

そして今、再び見やった空に、狼人間の姿はない。

取り逃がしたのだ。

彼女の言うことを必ずまっとうする義務なんて僕にはないはずなのに、しくじった、という気持ちが強かった。

まるで、投げられたフリスビーを取り損なった駄犬を叱るような目で、一二三さんが歩み寄ってくる。

「ご、ごめん一二三さん……僕、その」

「この」

そして、

「役立たず」

「う゛っ!?」

昨日に引き続き二度目、今日も意識を強制的に陥落させられた。

もっとも、今日は昨日のように穏やかな手法じゃなく、どてっぱらに凄絶な一撃を食らうという、体にも意識にも苦しいものだったけれど。