「やはり犯人はお前ね。光栄に思いなさい。東城の直系たる一二三が、お前に引導を渡す」

「それは、多いにご免こうむるね」

「お前に拒否権なんて、与えない」

背中しか見えない一二三さんの顔が、なんとなく、笑っている気がした。

その、突き出されている腕にちろちろと、赤いなにかがまとわりつき始める。

はじめ、一二三さんはミサンガなんてしていただろうかと、バカな考えをした。

が、次の瞬間、糸程度だったそれは、一気に野獣のような猛りを響かせ、炎へと成長した。

一二三さんが、炎を、腕に孕ませている。

それはまるで、昔の武将が装着した、籠手のようにさえ見えた。

炎の顕現に、狼人間の表情が、曇った。

厳つい獣面にすら明確に浮かんだそれは、焦り。

 エン
「炎!!」

「っ」

そして一二三さんの咆哮が直後、右腕を覆っていた赤が集束した。

網膜を貫くような紅蓮の光線が、爆音とともに撃ち出される。

すさまじい余波が、背後にいる僕にまで伝わってきたのだから、これの標的になっている狼はよほどつらいだろう。

荒れ狂った風に舞う木の葉が、びしびしと僕の頬を掠めていく。

が――