地べたに倒れていた僕でさえ、その衝撃波はいとも容易く宙へ持ち上げ、

「うっ、が!?」

背後の気に衝突する。

背中を痛打したおかげで呼気が掠れ、視界が接続し損なったテレビのようにブラックアウトする――のを、かろうじてこらえた。

(い、いったいなにが起こって……!)

今、この状況で気を失うことだけは、絶対にダメだ。

今を、今を見ないと、また昨日と同じ後悔や疑問を、明日も抱くことになってしまう。

両手両膝を突いた格好で見やった先、一二三さんは拳を突き出したまま、相手のそれを制していた。

僕よりも身長が低い小柄で痩身の女の子が、その二倍も三倍もあろうかという狼人間の拳と張り合っている。

異常な光景であるはずなのに、なのになのに、なぜにここまで僕は得心しているんだろう。

風間一二三にとって、そんなことはとても容易いことでしかないと。