「な、なんなんだよ、あれっ!?」

なまじ視力がいいことを僕は一瞬、確実に自ら呪った。

真正面から睨まれて、その威圧感に圧倒される。

それは、一二三さんが放つものと同じ、弱者を虐げる目。

きっとだれもが驚愕に、あるいは本能的な恐怖に動きを止めてしまうだろうこの状況で、しかし一二三さんは僕を叱った。

「なにしてる! 早く『目』をつけろ!!」

「うっ、あ、ああっ――はいっ!」

「させない!」

「ひ!?」

言われるまま、昨日一二三さんへそうしたように『目』をつけようとした僕は、突進してくるそいつに怯んだ。

けれど、すくんだ足は動いてくれず、重心だけが後ろへ。

僕は平地のここで、無様に尻餅をついた。

「ちっ」

と、一二三さんがわかりやすく舌打ちをかました。

直後、僕の横を抜けて、彼女も突進していく。

決して広くはないここで、両者は思い思いに拳を振り被り、

「おおっ!」

「はあっ!」

それを衝突させあった。

どうん、と、骨や肉ではなく、空気のたわんだ音が轟く。

一瞬遅れて、暴風。

壁のように発生した衝撃波が、彼女らを中心に落ち葉を吹き飛ばす。