けれど、ここ数日そんな単語、ニュースでも聞いていない。なんでそんなことを言うのだろう。

思っていると、声のほうが動揺した。

「まさか……知っているのか? ボクのこと。ボクのしていることを。――いや、そうか。それも当然か」

いや、それは動揺というよりも、驚嘆というほうが相応しい気がした。

同時に感心。

だれかが気付くのを期待していたいたずらに、ようやく一二三さんがチェックをかけた。

今このタイミング、今この瞬間、今この状況を待ち望んでいたかのような、どこか満足げな声だった。

「ふう、ん。その反応からするに、やはり犯人はお前なの」

なにかを確信してうなずく一二三さんの目は、相変わらず閉じられている。

が、いきなり、開いた。

「六条賢一!」

「あ、はいっ」

射を撃つかのような鋭さで名指しされ、肩が跳ねる。

一二三さんの細い指が、宙へ穴を開けるかのごとく、ぴしゃりとまっすぐ伸ばされる。

それは、

「あそこにいるヤツに、『目』をつけろ!」

声の主がどこにいるのかという、指示だった。