「そのお前が一二三に接触して来た。なにかと思えば、大した用もなかった。なお苛立たしかった」

「い、づ」

皮膚の剥ける痛みが、増す。

これはきっと、肉食のミミズが這ったように肉が爪に抉られているに違いない。

だけど、ここで彼女を突き飛ばしたらなにも訊けない。

彼女のことがわからない。

彼女がなぜ僕に怨嗟をぶつけてきているかも。

昨日の真実の真実も。

事態が、前へと進まない。

逃げる、わけには、いかなかった。

急に口をつぐんだ一二三さんの黒眼は、ガラス玉のようにつぶらで、黒い月のように怪しく見えた。

わかる。

それは、相手の存在をとてもとても深いところまで見透かそうとしてる目だ。

きっと僕を、試しているんだ。

耐えろ、六条賢一。

震えるな。

見返すんだ。

見つめ返すんだ。

僕の目だって、僕の目だって、彼女には負けない……。