しかし、

「いったいいつ、お前が自らをそう定義付けるか、一二三は待っていた。そしてようやく」

「痛……っ」

「ようやく、お前は自らが人外であることを、認めた。告白した」

その爪が僕の頬骨に、首筋に、食い込んだ。

彼女は、僕の首をもぎ取ろうとしてるんじゃないだろうか。

そう思わせられる、容赦のない力加減。

にもかかわらず、その瞳から逃れることはできず、僕の頭のどこかはまだ、彼女に『目』をつけたことを後悔していない。

甘い甘い花の香りの先にあるのは罠だと知っているくせに、踏み込まずにはいられず、溶かされるとわかっている溶液の中に溺れてしまいたい、この衝動。

「苛立たしかった。お前は人外でありながら、そのように振る舞わない。一二三はそれが気に入らなかった」

彼女が、とつとつと、マグマの泡のようにゆっくり、言葉を紡ぐ。

その度に、僕の皮がみちみちと削られるのを感じる。

一二三さんの目が、恐ろしい。

視姦なんてものじゃない。

視線で、僕を殺そうとしているようにさえ見える。