「じゃあ、もっと遠慮なく、訊くよ」

大木高等学校一年二組、六条賢一は、ここにいる。

「僕は昨日、君を殺した――気がする。でも君は生きている。生きているなら、なんの問題もないはずなのに、君は僕の、『第三の目』を通して怨嗟を送ってきているね」

「……」

「言い逃れはできないはずだ。君こそ、明らかに僕へ干渉してきてる。僕は君に『目』をつけたことはごまかさない。その『目』から、君はなぜ」

「ようやく、か」

ようやく?

僕を遮ったその、なにかを待っていたらしい言葉とともに、彼女の腕組みが解かれる。

その両手が、

「いったいいつ、自認するかと思っていた」

「!」

僕の両頬を挟み込んだ。

僕らの間には人ふたり分ほどの距離があったにもかかわらず、彼女はまたしても一瞬で接近していた。

至近から見上げてくる一二三さんの眼差しは、雨に打ち冷やされたアスファルトよりも冷徹で、淡白。

だからこそ、息を飲む。

固唾も息も、首を体にねじり込むように、のみ、殺す。

彼女の前では自己を主張してはならない。

野生の勘が、薮中で縮こまっていろと叫んでいる。