「……君は、何者なんだ」

と、僕は単刀直入に訊いた。

放課後の体育館裏は、屋内運動部のバスケット部やバレー部の声がよく聞こえていたし、グラウンドと体育館の間にあるテニス部の目もあった。

だから僕は一二三さんを体育館裏――の、運動部部室の裏、外部とのフェンス、部室の壁とに挟まれた狭い狭い場所にいた。

フェンスと沿うように植えられた木からの落ち葉が、人ふたり並んだらいっぱいの道とも言えない道を覆い尽くしている。

まるで絨毯を踏んでいるような心地のここで、けれど僕の胸中は見事に枯れていた。

それだけ、一二三さんの存在感は僕の生きる潤いを枯渇させていく。

かさりと、彼女の足元へ舞った緑の落ち葉が、鳴いた。

一二三さんは、腕組を解かない。

「一二三の名前は知っているはず。それ以上、なにを知りたい」

「名前じゃなくて、君の存在そのものを僕は訊きたいんだ」

「意味がわからない」

ふ、と笑ったその唇は、いや絶対最初から、すべての意味を理解していてはぐらかしているものだった。

彼女の両手が吊り天秤のような左右へ広がり、肩が上下する。