頭に、コンとなにかがぶつかる。

床に転がったそれは、丸められた、ノートのページだった。

飛んできた方向を見ると、幹が本を開くようなジェスチャーをしている。

飛んできたこれは、どうやら手紙らしい。

開いてみると、くしゃくしゃの紙に一文、『どうしたのさ?』とだけ書いてあった。

(どうしたのさ……か)

幹のほうにまた振り返ると、彼女は無言ながら豊かな表情で、『どうしたのさ?』という質問を繰り返していた。

僕は、ひょいと肩をすくめる。

(別に、どうもしてないよ)

と心の中で返しながら。

実際、本当は、思いっきりどうかしているのだけど、そんなこと言えるわけがなかった。ひふみさんのこと以外にも、信じられない、わけのわからないことが起こっているのだから。

幹にやっていた視線を、そのまま黒板へは向けず、右へずらしていく。

黒板と反対になる、教室の出入り口。そこにドアがあった。

昨日も、一昨日も、入学式から何度もくぐった、ドアがそこに。

まったく当然のように、だ。