僕は昨日、彼女になぜか惹かれて、『目』をつけた。なぜ『目』をつけた? それはわからない。

《――よくも、よくも、よくも――》

『目』で彼女を追っていたら、彼女はまっていたかのように、僕が『目』を使うのを知っていたかのように、教室に現れた。なぜ、現れた? 僕が『目』を使うと、わかっていたのか? だとしたら、それはなぜ? わからない。

《――よくも、よくも、よくも――》

彼女は、ほんの一瞬で僕の意識を昏倒させた。どうやって? そんなもの、ますますわからない。彼女が言った、『ジンガイ』という言葉の意味さえ、僕にはわからない。たぶん、一番正解に近いだろうとすれば『人外』……人あらざるものという意味だろうか。僕は六条賢一であって、ひたいに目はあるけど……人間だ。

《――よくも、よくも、よくも――》

目が覚めた時、なぜ彼女は倒れていたんだろう? わからない。あの時、本当に死んでいたのか? 死んで、いたと思う。冷静な判断ができたとは言いがたいけれど、少なくともあの時僕の目には、間違いなく死んで映っていた。彼女は、動いてなかった。なにも、なにも。

《――よくも、よくも、よくも――》