玄関を開ける。

お情け程度の前庭があって、飛び石の向こうにある門の前に、幹が鞄を携えて待っていた。いつものベルトタイプ、肩掛けリュックだ。

彼女は僕よりもきちんとしたリズムで生活して、きちんとしたリズムで毎朝、僕の家の前に立つんだ。

「や。おはよう、賢一」

僕の祈りなんてまっぴらとばかりに清々しいままやってきた朝同様、幹も、昨日となんら変わらない仕草で、片手を振ってくる。

やっぱり僕は、六条賢一でしかない。

苗字と名前に数字がひとつずつ入った、僕でしかない。

朝は朝で、幹は幹で、僕は僕なんだ。

そんな、当たり前の循環を感じながら、それなら昨日の光景なんて忘れてしまおうと思っている僕に、

「今日はあたしだけじゃないよ」

「え?」

幹は、昨日と違う言葉を繋げた。横を見て、ほいほいと手招きをする。

それに促されて、塀の陰から出てきたのは――

冷淡な表情を浮かべる、彼女。

「というわけで、今日は一二三さんもご一緒です」

「おはよう。六条賢一」

風間一二三が、僕の朝を踏み潰していた。