尻餅を突いたまま見上げてくる女の顔は、出せるだけ出しきったあらゆる体液で、透明にぬめっていた。

まるでサンショウオだな。

「たす……たす、け、へへ……」

この状況で、無理に笑おうとしたのだろうか。女の両頬に笑窪ができた。

もっとも、しな垂れた眉とがたがたやかましく震える歯、恐怖に振動する眼が、逆にその笑顔を狂的なものに仕上げている。

仕方なく、

「安心して」

笑い返してやった。

「痛くないから」

「ひ、やめっ」

言葉半ばで、女の喉笛に、噛みつく。

耳元で悲鳴が轟き、肩からのものとは度が違う、霧状になるまで勢いづいた血液が、広角を、頬を、目元をを、一気に濡らしてくる。

たった今まで生命を司り、それを運動させていた燃料のぬくみを感じながら――

「!」

我に、返った。

ハッと瞠目し、同時に力の抜けた口から、牙から、女の首が抜ける。

秒の間を置き、湿った音をあげて女の体が横たわった。