† 第五節



夜の公園はいい。虫の声は鮮やかで、月の光はたおやかだ。

その光をこの手で掬うことができたなら、それはどんなに冷たく心地いいだろう。

想像するだけで、快感に総毛立つ。

そして、月下涼風の中で行う狩りほど、清々しく気が紛れることはないと思う。

特に月が美しいのだから、言うことはない。

生け垣を跳躍した向こう、悲鳴をあげて逃げていた女の腕を、掴んだ。

途端、力が強すぎたのか、まるで安物の人形が如く、腕がすっぽ抜けてしまう。

ぶぢり、と、綿の束を強引にちぎったような音。

あまりに呆気なく腕が抜けたせいか、女は自分が隻腕になり、肩から血の噴水を撒き散らしていることに気付くまで、十数秒を要していた。

「いやあぁぁあぁああぁあ――っ!?」

女の悲鳴が、木霊する。

血がすでに、女の横顔をべったりと濡らしていた。

死に化粧に相応しいじゃないかと、いっそおもしろい。