が――

「っ、ち」

手応えは、まったくおもしろくないほど、なかった。

一瞬でもうもうと立ち込め、やがて晴れていく煙の中に、目を凝らす必要もない。

こちらが炎を振り抜ききる直前には、もうヤツは逃げていたのだ。

破壊の痕跡の中に、ヤツの細胞はひとかけらも残されていない。

もう一度、舌打ちした。

夕日は、思ったよりも早く沈んでいく。

すでに半分ほど、西の街並みに下から食われていた。

(帰ろう)

そう思った、直後、

背後で、

彼が立ち上がっていた。

「!」

こちらの意識の集中点をすり抜けたような、緩慢ながら、気配を完璧に殺した動き。

あまりのことに驚いて、振り返る。

彼は――なにかに乗り移られたように、ボウと立っていた。

頭を支える首はぐらりと傾き、背骨から膝にかけても、力が入っていない。

はなはだ、亡者のような、操り人形のような、立ち姿だった。

そしてその瞳が――ひたいの眼が――開いた。

「っ!?」

のだけ、見た。