その自信を殺気に混入させ、相手の動きを少しでも牽制する。

母の特技である孤立無縁領域を逆方向に発展させた、一点意思照射だ。

「動いたら、殺す」

そう、もう一度念押しすると、

「……そうは、いかない」

本来喋ることのないなにかが無理やりに人語をひねり出しているような声が、そう返事をしてきた。

「まったく予想外なことが起こってね――死ぬのは僕じゃない」

言葉の裏に、つまり、死ぬのは『だれ』なのかを読み取り――

笑ってやった。

「ざれ言を」

瞬間、

「やっ!」

声の主がその場から逃げようとするのを気取り、振り向きざまに右手を振り抜いた。

空を掻いた軌道そのままに、三日月型に濃縮された炎が数条走り、左右の壁後と、出入り口を焼き飛ばす。

廊下側が見事な吹き抜けになり、外へ向けて教室から一直線に五本、炎による引っ掻き傷が伸びていた。

コンクリートならば容易く焼き砕くことのできる、炎の爪だ。