† 第三節



あまりの腹立たしさに、思わず落としてしまった。

床の上で力なく伸びている男子の襟首を掴み、もう一度グイと持ち上げて顔を覗き込む。

さっきたしかに、ひたいに目があった。

この一二三を監視していたことを考えれば、何者かの手先かと思ったが。

(……コイツは、とにかく、違う)

まったくの見当違いだったようだ。

意識を落としているこの男は、ただのー情けない情けない、本当にただの人外だ。

あまりに情けなくて、イライラする。

(っ、おもしろくない)

わざわざ持ち上げたせいで、腕が無意味に疲れた。

机に叩きつけ、首から頭皮を剥ぎ取り、頭蓋を抉り、その脳漿をぶちまけて――

やろうかとも思ったが……そんなことをしたら母がうるさいから、やめておく。

ただ、床へ落とした。
母へ、今日の予定はどにも寄らずまっすぐに帰ると言っておいた。

にもかかわらず、そこからこうしてこの男が一二三になにかしようとしているのに気付き、動き出すのを待った。

この時点で、すでに予定外だ。