絶句してしまった耳元に、さっき以上の小声で、幹は一言。

「こんな、答えの出ない世界なんだよ、賢一。だけど、どうか挫けないでね」

「……」




――僕は六条賢一だ。

だけど、こんなにも六条賢一のことを知らない六条賢一なんて、どうだろう。

つまり僕は、僕のことを知らなかった。

だから幹に心配をかけたし、香澄姉さんに迷惑をかけた。一二三さんを苛立たせ、利用されたし、教会からも注意を受けた。

あの人が言っていた。

自分が何者であるか、理解するんだって。

理解、しなければいけない。

これから僕は、強化りから派遣されてくるだれかに観察されることになる。

保護観察期間……それが過ぎてなお、僕が間だ自分を明確に知覚できていなかったら、どうなるんだろう。

粛正という言葉が、何度かデュオの口からこぼれていた。

粛正……穏やかな意味でないことは、幹の反応やニュアンスから感じ取れる。