「賢一!」

「!」

いや違う!

いや違う違う違わない違う違わない違う違わない違う違う違う違う!!

「っっ、ちがぁああ、うううううああああ!!」

いつのまにか、僕はまた、途方もない、底すらない、一二三さんの意識に落とされようとしていた。

ワイシャツの背中がじっとりとこびりついてきている。

僕は、いったい、いつ、膝を突いてしまったのだろう。

肩でどころじゃない。全身をふいごのようにして息をしていた。

喉の奥から、ひゅごう、ひゅごうと、人間のものとは思えない呼吸音が響く。僕の呼吸音だ。

「賢一、無理、やっぱり」

と、袖を引っ張ってくる姉さんから一歩、僕は離れた。

一緒に腕を振り、彼女の束縛から逃れる。

僕はだれだ。六条賢一だ。今は、それだけわかっていれば、大丈夫。

だから終わらない。終われない。負けられない。

「一二三さん」

「……」

「もう一度言うよ。もう、やめよう」

なぜ?

そして繰り返される、眼力を通しての声なき意思照射。