僕はコンクリートの上に立っているんだろうか? 固まりかけのゼリーの上じゃないだろうか。平衡感覚が保てない。ここはどこだ。屋上だ。本当に? いや屋上だ。本当に 本当だとも。屋上なんかじゃない。ここは屋上じゃないのさ。本当に? そう。屋上じゃない。違う! ここは屋上で、僕はきちんと平衡に立っていて!

がたがたと肩が揺さぶられる。

「賢一! 開いて、目を!」

姉さんが青い顔をしていた。

「視線は防げない、この結界じゃ! 自分をもって、しっかり! 開いて、瞳を!」

「う、あ、あ……」

そうだしっかりしなければ。なにを? 自問しよう。僕はだれだ。六条賢一。六条賢一。それはだれ? 六条の血を引く邪眼の持ち主だ。そして? 一二三の意思に従う者だ。そう僕は一二三さんを崇拝する――違う! 違わない!