「い、いい、いえ、べ、別に……」

三つ目を見られたこと――尋常とは違う彼女の雰囲気――斜光の彩り可憐な教室――響く小さな音――

すべてから逃げ出すために、僕は席を立ち上がった。

ところが、

「嘘つき」

「!?」

いったい、どんな技を使ったのか、なにが起こったのか知れないけれど――

気が付けば出入り口にいたはずの彼女は、僕の眼前、一メートルとない距離に、立っていた。

まさしく、まったく、突然に。



「う、うああ……!!」

とっさに後ずさったものの、僕の席は窓側、後ろから二番目。

ごぅん、と鈍い音を立てて、僕の背中は窓ガラスに当たった。

腕組を解いた一二三さんは、まるでダンスの相手を探しているかのように手を伸ばし――