闇夜へ跳躍している一二三さんへ、幹が追い縋る。

空中で幹の右手と一二三さんの左手が衝突する。

昨日のような鈍い音が、土星のリングみたいに響いて、広がる。

幹の右手と、一二三さんの、左手が。




炎の右手が空いてる!

「カウンターに気を付けろ!」

と、叫んだ直後、

「六条賢一!!」

「!?」

一二三さんの三つ目すべてが、目の前にいる幹じゃなく、僕を捉えた。

軽業師のような美濃こなしで彼女は幹の拳を掴み、逆立ちする。

「貴様もここで!」

そして、空いている右手――炎の槍が、撃ち出された。

それはまるで、隕石が僕目掛けて飛来しているような錯覚を覚えるほど、圧巻とした殺意。

紅蓮の盛る、赫灼の狂気。

僕はただ、目を見開いて立ち尽くし、それに飲まれる未来だけを想像してしまった。