「気宇壮大な夢だね、一二三さん。だけど、それにすら教会が助力してくれるかな? そもそも、そんな名前ばかりに囚われた一二三さんに、歴史で語られるような東城家を作り直すなんてこと、不可能だと思うよ」

「黙れっ!」

瞬間、一二三さんの右腕が突き出された。業火がバッファローの群れのように押し迫ってくる。

つい、目を閉じてしまった僕は――浮遊感を覚え、

「わ!?」

驚いた。幹が僕の襟首を掴んで、跳躍していたのだ。

高く、幅の狭い放物線を描く形で、幹は着地する。

左前方、これから露天風呂でも作るんじゃないかっていうような大きな溝が、一瞬で穿たれていた。

熱のせいか、コンクリートから白い湯気が細々とあがっている。

抉られ過ぎたコンクリートの向こうに、少し、三階の窓が見えてさえいた。恐ろしい破壊力だ。

一二三さんがゆらり、振り向いた。腕には炎。冷徹な眼差し。

その形相は、今までとまったく変わらない、ひどく褪めたもの。

それなのに、どうしてそんなにも夜叉を秘めた瞳でいられるのだろう。