炎の絡んでいない左手が、ひたいへ持っていかれる。

うつむいたかと思えば仰け反り、天を仰いだと思えば、一瞬でニュートラルへ。

いっそ楽しそうな表情が、そこにあった。

「ご明察! ただの憶測にしては、まるで一二三の心境を綴ったかのように見事な推察だった。褒めよう。

そう、六条賢一がどうであろうと、お前は最初から一二三の狩猟標的。教会へ差し出す供物に過ぎない」

それじゃあ、生け贄じゃないだろうか。

僕の中で、一二三さんへの反感が強まる。

幹もおかしければ、一二三さんもおかしい。

みんな、みんな、おかしい。

幹の唸り声が増す。

「っ、人のことを躾がなってないと言ってたけれど、そっちはそっちで、ずいぶんえげつないじゃないか。恐れ入るよ、さすがに鬼だね。

でも知らないのかな、教会はそんな賄賂じみたことじゃ傾かないよ? 変わり者ばかりだって話だからね」

「ふっ、そんなものは知れたこと。一二三は東城を取り返す計画なんか立てない。東城を新生させることが、一二三の目的。この血筋の誇りにかけて、一二三は教会の助力を得たい。一二三が第二の東城を築くため」