苦笑しつつ、一二三さんへ振り向く。彼女はまだ、腕に炎を飾っていた。

「一二三さん」

「……」

「僕らさ、見ての通り和解したよ。僕も、これからは自分のことを知っていこうと思う。この論争は、だからこれで終わりだよね。その火をしまってよ」

――ところが――

「お前、勘違いしてる」

一二三さんは右手を前へ突き出した。バケツを倒したように、腕にあった炎が直線、肉薄してくる。

「――らあ、はっ!」

「!?」

一瞬で僕の前へ飛び出した幹が、大きな爪を振り回して炎を掻っ捌いた。

視界を覆うような巨体の向こう、赤い閃光が霧散するのが、かろうじて見える。

思わず目を白黒させてしまった僕は、少し横へずれた。

闇夜へ散り散りになった紅蓮の向こう、佇む一二三さんを見て、ついもつい、笑ってしまった。

笑わずにはいられなかった。

「は、は、あはは……な、なんだよ一二三さん……なんで? なにするんだよ? 僕らはもう戦う理由なんてないよ? ねえ?」