「だから……ボクの苦労を、無駄にしたの?」

「そう……今度の推理――いや推測は、正解だよ」

僕は、僕を理解しないといけない。

だからこの場へ踏み込んだ。

「そして幹、それを君にわかってもらいたいと思った。だから、今こうして話してる」

「……」

「僕は六条賢一だよ、幹。今ここでようやく、僕は自分に確信を持ったし、疑問が解消された。もう、僕に隠し事をしないでよ、幹。僕は真っ正直な自分を見たかったし、これからは、真っ正直な幹を知りたいよ」

「……賢一……」

彼女の瞳を彩る金色が、じわりと滲む水滴に、揺れた。狼の顔が、下へ向く。

泣いて、いるのだろうかと、覗き込もうとしたら――

「ば、バカ……っ」

「むぐぉっ」

面白いほどもふもふとした大きな手に、顔面を押し潰された。

恥ずかしがった声が聞こえる。

「ひ、人の泣いてるとこなんか覗くなっ。悪趣味っ」

「……」

「千里眼も使わないでよ!?」

「はい」

そんなこと考えてない。

ただ、巨大な狼人間の姿でそんなことを言われると、ちょっと不思議な気分がしただけだ。

かわいいのか怖いのか、わからない。……なるほど、こういうのをコワカワというのかもしれない。