瞳を開いた僕は、見た。

幹の体になにか、得体の知れないものが絡みついている。

鎖のような文字のような蔦のような、紐状の、なにか。

それらは空中へ伸びて、消えている。

まるで、幹のいる場所だけに都合よく現れた、蜘蛛の巣のよう。

それが彼女の関節という関節に絡まり、動きを封じていた。

姉さんが教えてくれた、瞳の魔力は六つ。

幹を封じているのがどれに該当するのか、明確には判断できないけど……僕の力なら、僕がどうにかできるはずだ。

なによりも、僕と彼女の話し合いに、そんな束縛は要らない。

だから、その枷を外そう。

束縛を、解こう。

解放するんだ。

目を、閉じる。

そして再びまぶたをあげた時には、彼女を縛るものはなくなっていた。

(よし)

僕にも、できた。

「――ほう、さすがに本元。潜在的に力の使い道を理解している。一二三が用いた付け焼き刃の呪力では敵わない、か」

満足げに言う一二三さんを無視して、僕は幹へ歩み寄った。

不可視の束縛がどれ程の負荷を彼女に与えていたのか知れないけど、黒い巨体ががくりとコンクリートに膝を突く。