絶対、それ以上、もっとたくさんの質問を投げ掛けたかったんだろうけど、本当に、それだけを言うのが精一杯のようだ。

そんなにまでして、僕に言いたいのか。彼女の気持ちの大きさを、痛感した。

彼女は僕の大切な幼馴染みだから、なおさらに。

「一二三さん、僕は幹に話があるんだ。幹を自由にしてやってよ。一二三さんなんだろ、幹を縛ってるの」

「……」

言ってみたものの、炎をまとう彼女は、まったくの無反応だ。

まるで初めて逢った時のように冷たく、淡白な表情で、なにも答えてくれない。

そのひたいに輝くのは、僕と同じ。

そういえばさっき、幹が言っていた。

天使の火を血に吸収したって。……ということは僕の瞳も、彼女は?

なら――

「幹、待ってて」

一二三さんの瞳がかけた呪縛なら、僕の瞳でも解除できるはずだ。

双眸を閉じて、ひたいに意識を集中する。

今日これで、何度目の開眼だろう。こんなに何度も、頻繁に『目』を使ったことはない。

だけど、疲れるだとか、恐れるだとかはない。

あるのは、文字通りの開眼意識。

僕が僕を見つめていく、認識していく、自己定義の発見だ。