† 第十八節



結界は姉さんが解いてくれた。

だけどそのせいか、衝撃が下まで筒抜けになり、屋上へ続く階段はとんでもないありさまになった。

瓦解という状態。

ロッククライミングの経験なんてあるわけがないから、よくここまでたどり着けたと思う。

そして屋上で見たのは、なぜか固まっている人狼――いや、幹と、炎を籠手のようにまとわせた一二三さんだった。

とにかく、瓦礫が散乱する昇降口から抜け出す。

屋上は、よくこの状態で天井が保っているなと感心するほど、ひびだらけだった。

下手をすれば崩壊して、下の階を潰してしまうかもしれない。

「けん、ぃ、ち……!」

と、幹が動かない牙の間から、声をかけてくる。

いったい、なにがあっていたのかわからないけど、どうやら今、彼女は身動きがまったく取れないらしい。表情の一片さえ、動かなかった。

それなのに、彼女は声を押し出す。

「なぜ、来、たの……?」