こちらはあと一瞬、この掌握している首に力を込めてやるだけで彼女の命を摘み取ってやることができるのに。

なぜ彼女はこの状況で、笑えるのだろう。

「なにかおかしい?」

「なにか? ふ、ふふふ、この状況で、お前以外におかしなものなど、あるの?」

「……」

白い肌、黒い瞳、それを彩り赤い斑紋。

艶然というのは、一二三さんのような美少女のためにあるんじゃないだろうか。

そう、鬼の少女のためにある言葉だ。

「こうして一二三を捕らえたことで、お前は勝ったつもりになってる。その驕りが、あまりにも笑えてしょうがない」

「……負け惜しみかい? ボクがこの右手を握り締めれば、君の首をもぎ取れるんだよ。いくら一二三さんだって、そんなことになったら生きていられないでしょ」

「たしかに……。けれど――」

一二三さんの瞳が、

「隠し球はここぞという時に取っておくものだから」

開いた。

鼻筋を挟んで二つあるものとは、別物。

ひたいに燦然、三つ目の眼。

青い青い、ぎょろりとした瞳。