バックステップを繰り返す一二三さんが、右腰で拳を溜める。また炎を撃つつもりか。

だけど、地に足がついているボクに、それは当たらない。

本来の炎の顕現がどんなものなのか知らないけど、一二三さんの炎は直線しかない。

発現の瞬間さえ間違わなければ、どうとでも回避できる。

さらに言えば、ボクに遠距離を攻撃する方法がないと思っている彼女は、浅はかだ!

彼女はボクを馬鹿力と言う。

そう、ならばこそ。その馬鹿力をもってすれば、なにができるか。

目一杯の腕の振りを利用して空気を薙ぎ集め、一転に集中、濃縮させたそれを投げ出すことだってできる。

馬鹿力と速度。

人間を超越しているボクの手腕なら、

 ハ
「破!!」

空気の弾丸を、撃つことができる!!

「うっ!?」

そして見えない弾は、一二三さんの腹部に命中した。

音はない。

ただ、一二三さんの制服の中央が面白いほど円形にたわんだ。

彼女の腕にちらついていた炎は消え、細く小さな体が飛んでいく。

「終わりにしよう、一二三さん!」

ボクはそれを追いかけた。