「だああああっ!!」

最後の一押し、気合いとともに腕を振りきると、炎が霧散した。

着地し、腕はコンクリートを砕くも、肝心の手応えはない。

一二三さんは、ボクと接触する直前に飛び退いたのだ。

馬鹿力……と、一二三さんは言っていた。

つまり、純粋な力勝負ならボクが優位だ。

だけどそれは、向こうもわかりきってること。

彼女にとっての最善は、距離を置いて炎で焼くことだろう。

はなから、取っ組み合いは彼女の中にない。

だけど、それならそれでなおのこと、至近距離での勝負に持ち込めば、勝機はいくらでもあるはず。

だから、

「逃がさない!」

突進する。その細い胴体目掛けて。

蹂躙するんだ。ボクの世界を壊す誰かは、容赦なく。

ボクの世界は、六条賢一を軸に回ってる。

彼が幸せなら、ボクはどこまでも血塗られよう。

たとえ友人の骨肉臓腑を踏むことになっても、賢一の世界は、ボクが。