一緒に、賢一の平和を守ろうと約束したのに。

賢一には、こんな恐ろしい世界を味わわせたくない。

香澄さんだってそう言っていたのに、なぜ、その世界の入り口を彼女は開いてしまったのだろう。

下では、やや腰を落とした一二三さんが右の拳を構えている。

もう、その呼び動作は見慣れた。ウリエルの火だ。

竜が火炎を吐くように、彼女は天使の火を魔法魔術の公式や代償を無視して顕現させられる。

まさしく、化け物だ。

いや、だからこそ、東城なんだろうとも思う。

生涯、そして子孫をもってして絶対者へ登り詰めていく、昇華の血筋。

完璧超然の化け物を生み出すのが、その血だ。

彼女のお母さんが東城の家を捨ててしまったせいで、その『姓』を継ぐ者はいなくなったって聞いたけれど……

それで力が消えてしまう道理はない。

DNAは不滅だし、その鬼の流れは劣性遺伝子なんかじゃない。

潜在意識と呼ぶに近い。