それは、行くのなら止めはしないけれど、行ってしまったら二度と戻ることはできないという意味だろう。

そしてできるなら、行かないでほしいという願望も込められている。

幹なら、どうしたかわからない。ここでまた、僕を殴っていたかもしれない。

けれど姉さんだから、選択をさせるつもりなんだ。

この僕に、選ばせる。後悔するか、納得するか、踏破するか、定義するか苦悩するか併呑するか、あるいはそろを、されるか、させられるか。

あえてこの僕に決定権を握らせて、尻込みさせるつもりなんだ。


けれど、そうはいかないんだ。

僕は何者か?

その疑問の答えは、階段の先にこそある。それを知るための一歩が、自分の覚悟ひとつにかかっているのなら。

「姉さん、僕はただ、自分を知りたい。そこに後悔が待ってても、僕は僕を知るべきだと思うんだ」

あえてひたいの瞳は閉じ、二つの目だけで彼女を見た。

はっきりと言う。

「香澄姉さん、僕は行くよ。行きたいんだ」

「そう……。――なら掴んで。英断と言える、未来を」

姉さんが、鈴を鳴らした。