腕はまだ放さない。

ヤツの上からすばやく下り、芋でも掘り返すように無理やり、引っこ抜く。

そのまま持ち上げ、また落とす。

百八十度の振り回し。コンクリートへのダイブを強制する。

「ぐっ!?」

衝撃と、大竹の短い悲鳴。

腕から伝わる、ヤツの体がたわむ感触。

しかし、そんなものは聞き慣れているし、感じ慣れている。

この一二三が、表情ひとつ変えるはずもないだろう。

一度、二度、三度、彼女を振り回し、叩きつける。

その度に起こる轟音と震動、爆ぜるつぶて。

まるで、小さな子供が人形を振り回すようだと、我ながら笑えた。

周囲はすでに、網目模様が広がっている。

「ふん」

少し飽きて、振りの途中で手を放した。

黒い巨体がひゅうと舞って、昇降口の横に突っ込んだ。

震動に金具が軋み、ドアが派手な音を立てて倒れる。