「それは一二三さんには言えないのかな?」

跳躍した大竹は、すでにコンクリート上。先程と、真逆の立ち位置。

「一二三さんが賢一に接触した理由はなに? それは賢一が人外知識に乏しかったから、苛立たしかったんでしょ? だから賢一に無理やり、いろいろ教え込んでる。それは強制じゃないの? 価値観の押しつけじゃないの? 賢一の意思はどこ?」

「それを、ならばお前は知っているとでも?」

同時に、上へ跳ぶ。

空中、繰り出されてきた拳を肘で受け流し、蹴りを返す。が、それは受け止められた。

カウンターの爪が、突き出されてくる。

もっとも、カウンターははなから読めている。

手の甲を横から当てて滑らせ、その手先を捕縛。小脇に抱える。

跳躍が頂点に至り、落下が始まった。

一二三はしかとヤツの腕を抱え込み――コンクリートへ叩きつけた。

「っっ、か……!!」

衝撃が広がり、屋上が数十センチ、陥没する。

その中へ沈む大竹の喉から、血が霧と発せられた。

頬に、清々しい鉄臭さが香る。

一二三の好きな匂いだ。