人間ではないのに人間であろうとする。

それは、果たして美徳だろうか。

「一二三は一二三をごまかさない。一二三は一二三を認めるために、一二三である。この答えに、変化はない」

「でももう、東城は風間になったんでしょ? もう、門も塔も実質はなくなったって言うしね。血は残っても、認識は風化していくんだよ。それなのに、一二三さんはいつまで肩肘を張ってくつもり?」

「自らの野望と時流を、都合よく掛け合わせるべきじゃない。お前はただ、その姿を六条に晒したくないだけ。そのために、人外はつらい、そういい触れているに過ぎない。

それがお前の過去か、虚言か妄言かは、また別の問題。自己定義は人の数だけ増えるもの。一二三の価値観、六条の意見、大竹の意識は別次元。それらを無理に照合することはない」

コンクリートを踏み締める。背後で炸裂音がした時にはすでに、爪を振り上げている。

一気、降り下ろすも、大竹へは当たらなかった。

白い軌跡はただ、フェンスをわかめのように切り分けただけ。

ねじくれたフェンスに着地する。