跳躍回避していた人狼は、正面、フェンスの上へ軽やかに着地した。

ガーゴイルがそうであるように、強面から金色の眼で睥睨してくる。

「一二三を見下すなんて、いい度胸」

人外である自分を悔やんでいる大竹幹。

だからこそ、同じ境地を味わわせたくなくて、六条賢一をたかだか人間ごときに立ち止まらせようとしている。

にもかかわらずその彼女は、どうしてどれほどいかにもまさしく、人外である。

見たか。先の動きを。

この一二三が、捉えた、と思ったのはあくまでも残像に過ぎない、そのこなしを。

そこまでをもってして、彼女はなにを言う。

「その自尊心を傷つけるつもりはないけどね一二三さん。この力とその力、意義はなんなのさ。有意義を求めるなら、今の世の中、こんな見た目も力も不必要だよ? 学年でいい成績を収める。それだけでも充分だと思わない?」

そう、彼女はあくまで人間であろうとする。