姉さんの言葉はいつでも倒置法。聞いていると、妙な呪文にさえ思う。

「煤祓いは守ってきたの、六条の家を」

「……姉さんが、ウチを?」

「そう。大昔にあるの、六条と鈴原を繋いだ、恩義が」

かつん、とまた一段、姉さんが下りてくる。

僕と彼女の距離は、あと階段三つ分。

姉さんの足が、ゆっくりと、

「それは契り。血の重ならない親類。義兄義姉、義弟義妹を永遠に。だから見守るの、六条を。そういう役割なの、私は。だから守るの、賢一を。だから行かせない、この先に」

詩のような言葉とともに、かつん――階段を踏む。あと二段。

「待ってよ姉さん」

と、僕は、さらに一歩彼女が踏み出すのを止めた。

目線は、そらさない。今はそらしちゃいけない。

どれだけ、彼女の存在が僕の前に立ちはだかって、この膝を震わせてきていても、逃亡するわけにはいかない。

僕は、屋上に言って、今までわからなかった疑問を解消しないといけない。

あの人の言葉を変換するなら、僕は今こそ、自分の疑問回路を生産しないといけないんだ。

電球に、明かりをつけるように。