「……姉さん――どうしてここにいるんだ?」

言って、頭を振る。

そんなこと訊かなくてもわかるだろう。質問は選ぶべきだ、六条賢一。

「姉さんは……幹の言ってた協力者だね?」

そう、今確認すべきは、それだ。

けれど、

「賢一」

彼女は、質問に答える様子はなかった。

かつん、と大きな音を立てて、姉さんが一歩、階段を下りてくる。

どうやら、屋内でありながらパンプスを履いているらしい。

姉さんにしては、非常識だと思った。

「賢一は知ってる? 煤祓いって」

かつん、とまた一段。

「煤払い?」

「ううん、煤払いじゃなくて、煤祓い」

「?」

意味がわからない。わからない、わからない。

またこんな一瞬でさえ、僕の前には疑問ばかりなのか。

けれど、その疑問の答えを、姉さんの唇は紡ぐ。

「造語でね、煤を邪と見立てた。生業があるの、煤祓いっていう。その煤祓いなんだ、私は」