もっとも、

「悪いけど……そんなのは許さないよ」

大竹幹にとってそれは、あまりにも認めがたいことだろう。

いつのまにか彼女は、目線の高さまで持ち上げた右手に、小さな鈴を下げていた。

赤いリボンのついた、銀の鈴だ。

《あ、それ……》

六条がなにかに気付いたようだが、大竹がそれを遮ってしまう。

「あたしは、やっぱり一二三さんを倒すっきゃないみたいだね。一二三さんがいるから、賢一がおかしくなるんだ。賢一の日常を壊す一二三さんは、敵だよ」

ちりん。鈴が一度、鳴った。

それは、合図。

音は波となり――ちりん――波は風となり――ちりん――風は幕となり――ちりん――幕は壁となる。

司法六方八方十二方――ちりん――同心円状に広がっていく。

それは、清浄な圧力。
ちりん。
空間への作用。
ちりん。
一定の距離を広がり、停滞。
ちりん。
徐々に徐々に蓄積されるヴェールのような幕は、つまり障壁。
ちりん。
内外を隔てる境界。

簡易的だからだろうか、それにしても、あまりにわかりやすい、これ。

「――結界、か」