「よほど、六条賢一に傾倒してる。それは、――恋愛感情?」

「否定はあえてしないよ。さすがに幼馴染みだから、今さらお互いを男女と見るのは難しいし、恥ずかしいけどね。愛情は少なからずある。それがどんな類いの愛なのかはともかくだけど」

「そう」

ならば――

「――一二三からも質問する。もしも仮に、六条賢一自ら境界線を越えるとしたら、それを望んだら。お前、どうするつもり?」

一センチ、確実に、彼女の頭が揺れた。

動揺を見せたのだ。

「彼の意思を尊重すれば、彼はお前の今までの努力をすべて水泡に帰してしまう。が、お前がもし六条賢一のためという選択を貫くなら、過去を徒労にしてしまうことが正解。ただ、それをお前は実行に移せる? 今までの自分の行いを正当化するための切り札とさて、六条賢一を凡俗の中へ縛りつけるため、その意思をねじ曲げはしない?」

沈黙が、

「……」

およそ、

「……」

十秒あった。