「現実から逃避しようというの? そこにあるお前を無視して、お前にあるものを抹消できると? 無謀な願望や夢想に逃げることが可能だと? 六条に、それを押しつけるの?」

「完全には不可能だろうね。できたとしてそれは、ただの引きこもりに過ぎないでしょ。

あたしが求めるのはそういう世界じゃない。そして、たとえどれだけ世界を求めても、世界は変わらない。

だけど、その希望が賢一にはあるんだ。これは押しつけじゃない。賢一のためさ。

あたしは賢一を、とにかく人外魔境に触れさせてこなかった。すでに覚醒してたからね、あたし。賢一に影響するかもしれないそっち方面を駆逐するには、なんの苦労もしなかったよ。

大竹という姓はもともとはオオタケ、つまり大嶽の意味を持ってた。罪悪をほふる血さ。この力は、邪魔者を排除するには申し分なかったしね。利用はしてる」