語る彼女は、体中の皮下でミミズかムカデでも徘徊しているかのように、苦悶の表情を浮かべた。

しかし、そこまでの苦悶を、味わったことがない。いや、味わうような考え方を、一二三は持っていない。

一二三は、自分を呪ったことがない。正直に答える。

「一二三は、それを恍惚以外で捉えたためしはない」

これに、予想外にも大竹は、素直にうなずいた。

「そう、どうしても逃れられない恍惚感。残忍なまでの愉悦。他者を見下す超越感。

でも――そんなもの、なくてもいいじゃない。恐ろしいし、こんなの尋常じゃないよ。

平凡は退屈? 低級? 無価値? ううん違う。平凡は、無知でさえなければとても幸せだよ。

望むならあたしは、平々凡々、取り留めない普通の女の子でありたいよ。そう思うのも、あたしがあたしに覚醒したから。

賢一が完全になにもかも覚醒したら、あたしと同じ思いをさせる。それは見過ごせない」