「もちろん逆に、根拠ない想像も同じくらいに好きだね。だから未来だって想像する。知ってる? 運命は人の願いから、未来は想像から生まれるって。夢幻に人が繰り返す、無限の予想図の中に未来が存在してる。

未来は多数決で決まっててさ、いつだって少数派は顔を出さないままに潰えてく。時に氷山の一角が現れると、それが歴史的事件になる。

わかる? 同じように、あたし達みたいな少数派は、潰えていくんだよ。それなのに、なにを主張するの? なにをなすの?

悪戯に覚醒する力はこれから、人を人あらざるものへ変えることで、当人を苦しませるよ」

そして同時に、なかなかの哲学者らしい。

ゆっくりと、フェンスから背を引き剥がす。

刺さっていた針金が抜ける生々しい感触が肉を、皮膚を撫でていった。

苦しげな表情は、絶対に見せてなるものか。

しっかりと、二つの足でコンクリートを踏む。