「血に……? つまり、ウリエル起源の火をその血に吸収したんだね。そっか……生涯成長を続ける東城の血――それは、自分にない力を吸収する働きもあるのか。一二三さんはじゃあ、まるで竜みたく当たり前のように火を発言させられる……そうだね?」

「その通り」

「……なんて、ことかな。それじゃあ本当に、君は化け物だよ。手にあまるよ」

と、途端、彼女の足から力が抜けた。

こちらが反撃を企てるよりも早く、彼女は後方へ飛び、距離を開けた。

大竹幹は、舞台女優を気取るように、両腕を広げる。

瞳からいつのまにか、金色が抜けていた。

「それじゃあ本題だよ一二三さん。この質問はあくまで話の切り口に過ぎないけど、その能力で、一二三さんは何をしたいの? なにができるの?

鬼である意義は? 火を操れる利点は? 強靭な血から、脚力、溢れる食欲と衝動、そして人外という異世界にいきる心境。すべてのどこに、利点があるの?

この質問の答えには、『現代で』っていう前置詞が必須だよ。今の世の中、あたしがさっき言ったように、塔や門、蔵と城が神聖視されるようなシチュエーションは、この大木市にすらもうないよ。

力を誇示すれば傲慢。身の振りを誤れば犯罪。露呈を繰り返すなら教会が動くし、†へ至ろうものなら粛正が執行される。

一二三さんが求めるような世界は、たぶんきっとない」