「こんな格好ではなんだけどさ、少し話をしようよ。素朴な疑問や、しようもない話だよ」

「実のない話は嫌い」

「そっちにはなくても、あたしにはあるんだ」

かかとの圧力が増し、あばらが軋むのを感じた。

一瞬の反論すら、今は許さないつもりか。

「本題に入る前に訊いておきたいんだけどね、一二三さんがさっきから使ってる炎――元来からの鬼の力じゃないよね。あれはなに? 魔術とも、魔法とも違うみたいだけど……?」

答えたところで、その力がなくなるわけでもない。

「あれは、ウリエルの火」

「ウリエル――確か、天使のひとりだよね。ならそれは、契約によって引き出される魔法だよね? 代償と報酬の公式は構築されてるの?」

「いいえ。もはや、これは東城の血に組み込まれた力。母上から受け継いだものよ。代償も、公式も不必要」