次の攻撃がくる前に、右の拳を腰の辺りで溜める。

彼女の左手が掌底を構えているのを見て、笑った。

「そんな半端な力じゃ、この一二三には敵わない!」

一二三の右腕に、炎が絡む。

天の火。懲罰の炎。

その紅蓮が、一二三の手中に。


 エン
「炎!」

突き出した腕から、それは直線、破壊の槍となる。

余波にさらされる周囲のコンクリートが溶解し、汗を掻くように垂れていく。

しかし、その業火はヤツを捉えるには至らなかった。

すばやく回避したのだろう。炎の右脇から、身を低くした彼女が突進してくる。

その手が人間ものにしては長すぎる爪を連ねていた。

大きく開かれた五指が下から弧を描いてくる。

こちらが突き出しているのは右腕。その軌道だと、こちらの右肩胛骨から肩を根こそぎ持っていくつもりか。

しかしだ。

「お前も甘い!」

技を繰り出した直後のカウンターは、先程と変わらない。

大竹幹と同じように、伸ばしていた腕をぐるりと振り上げ回す。

ヤツの爪が、眼前を下から上へ通り過ぎた。

ここでカウンターを仕掛ける。